やはり本歌だった...骨董市・7万円の十手について
こちらの記事で触れた『 十手&采配のセット 』の、十手について記事を書きます。
そのため、セット内容についてはその記事をご覧ください。
先ず、十手の全体はこの様になっています。
真鍮製です。
小ぶりですが見た目に反して重く、棒身は若干角があるため、手製なのが分かります。
- 全長:28.5糎、紡錘形
- 重量: 300グラム
- 棒身は真鍮の地肌が露出しているが、若干銀色を帯びている
- 太刀もぎ鈎は直角で平形、角が丸くなっており(撫角)、おそらく『 割かしめ 』で付けられている
- 握柄は金鍍金が施されており、唐草紋様が施されている
- 握柄と紐付環の間に、赤銅の座金あり
- 紐付環はほとんど銅色になっており、二重の菊座でかしめ付けられている
- 棒身、握柄、紐付環の境目には溝が設けられている
全体的に気品がある造りになっており、目明かし十手とは異なり丁寧に作られております。
小ぶりな十手のため、武器としての十手ではなく身分証としての十手だと思われます。
棒身が若干銀色かかっているため、棒身及び太刀もぎ鈎に『 銀流し(水銀鍍金)』が施されていたと思われます。
経年劣化でほとんど取れており、真鍮の地肌がはっきりと確認できます。
太刀もぎ鈎の接続方法を『 割かしめ 』と断定したのは、鈎反対側にかしめ跡や鈎脚穴が確認できないこと、真鍮製の十手に多く用いられる方法であるからです。
握柄も金鍍金が部分的に取れており、おそらく真鍮の亜鉛分が経年劣化で抜けてしまい、銅色になっております。
紐付環は、先端にかしめ跡や切れ目の様な筋がないため、以前購入した目明かし十手の水平回転環と同じ作りだと思います。
おそらく、紐付環台座にC環を鍛接して製造したと、考えられます。
購入時に、この十手の出所もしくはどこで購入されたかを、聞き忘れました。
私は『 江戸町方与力の私物十手 』と思っていましたが、谷口柳造氏の書籍を読んでみると、地方の代官や甲府勤番、日光奉行所、駿府町奉行所の与力同心も同型の十手を持った様です。
そうなると、もしかすると『 駿府町奉行所の与力の十手 』の可能性があります。 以前『 駿府型の十手 』について伺う機会があり、その時は『 大型の立派な十手 』だと聞き及びました。
私観ですが、大型の十手は同心が持った十手で、真鍮製十手は与力が持った十手ではないかと考えております。
捕物の第一線で活躍するのは、江戸町方もそうですが『 同心 』であり、与力は捕物に参加しても『 捕物の指揮を執る 』ことが多いです。
※目明かしは同心の指揮で動き、捕物をサポートする。
したがって、采配を持つのは与力クラスの上級捕吏であると考えられるため、この十手&采配のセット は、『 駿府町奉行所の与力の十手 』ではないかと考えました。
この十手は、私が何回も自作した『 真鍮製銀流し十手 』だと思います。
十手の中で最も好きな十手でありますが、上級捕吏の十手で滅多に市場に出る事はなく、市場に出ても十万円を超える高値が付くため、『 高嶺の花 』と諦めていました。
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まさか骨董市で、しかも采配と桐製の箱込みで7万円で購入できるなんて、夢にも思わなかったです。
私の様な若輩者が持つべき十手ではないため、畏れ多くて購入は躊躇しましたが、これを逃しては次は無いので、おもいきって購入しました。