近江の御隠居の趣味録

時代劇関連や刑事ドラマ関連、モデルガン、十手関連、ドール、figmaやその他の趣味用のアカウントです。更新頻度と共に修正頻度も高いですが、ご容赦ください。

まさか...?とりあえず十手を購入

ヤフオクで、地方の上級捕吏の様な十手を購入しました。
本物なら良いなぁ...。






先ず、今回購入した十手がこちらです。



鮫皮巻きの十手です。
鮫皮巻きは、 最初に買った贋作十手の影響で避けていたのですが、最近『 地方捕吏の十手 』が欲しかったため、購入しました。



全長:33糎 実戦向きとか戦闘用ではなく指揮棒程度の十手だと思います。
したがって、与力か同心の十手と思います

棒身は先細りで、細めの造りになっています。
基本的に黒錆で覆われていますが、 黒錆の上に赤錆も生えております。




太刀もぎ鈎は直角で矩形 形は問題ありません
しかし、今回はここの付け方が気になります




先ず、 これまで集めてきた十手と異なり鈎の反対側にかしめた跡矩形の穴が見当たりません
また、鈎の付け根に溶接した跡もありません




※鈎を溶接した十手は、偽物の特徴。

ここは、 後ほど私の推測を解説いたします

握柄は先細りで鮫皮巻き 黒漆をかけて研ぎ出した『 研ぎ鮫 』と思われます。
また、鮫皮の粒度も細かいと思います。



鮫皮の巻き方ですが、これはどうなのでしょう。
十手握柄に鮫皮を巻くときは、鈎がある面に縦の合わせ目を置くことが多いため、 『 蛭巻 』の様にくるくると巻いた十手は、見たことがありません

不思議な巻き方をしておりますが、 黒漆をかけて研ぎ出されているため見た目は美しく握りやすいです。

握柄上下の縁金、柄頭は、両方とも鮫皮と高さも合っている様に思いますし、材質、紋様も同じだと思います。




※鮫皮握柄の場合、縁金、柄頭の材質、紋様は同じで、高さも鮫皮と等しく作られる。

縁金、柄頭に黒革の様なものが見られますが鮫皮に黒漆をかけているため、それが縁金、柄頭に付着したと思います。


紐付環軸の付け根が太めになっているため、紐付環軸は棒身から打ち出して作ったと思われます。

一重の菊座を挟み 紐付環軸をかしめ打って留めています

紐付環形状は、もしかすると『 独鈷型 』かもしれません。
※三鈷杵型、五鈷杵型など、まじないや宗教的な思想を反映した紐付環は存在します。

この紐付環もまたよく分からないです。
多くの紐付環は、台座から2本細棒を打ち出し、かしめ打った後に細棒を曲げ、鍛接若しくは付き合わせて製作します。

今回の紐付環は、先ず上記の作り方ではありません
また、 台座と環に付け根の様なものが見られないため、以前購入した十手で推測した「台座にC環を鍛接して作る方法」とも思えないです

そのため今回の紐付環は、1つの真鍮材から紐付環を削り出し、かしめ打つ作業は金槌で直打ちではなく、タガネなどの道具も使ってかしめ打ったのではないかと思われます。



さて『 太刀もぎ鈎 』についてです。


十手の鈎の付け方で、 主に銀流し同心十手(真鍮製銀流し十手)に用いられる『 割りかしめ 』という方法があります。

下記は、その『 割りかしめ 』の説明についてです。

棒身に穴を彫り、穴の口を小さく、底を大きくえぐる(反対側に穴を貫かない)。
穴の入口ぎりぎりの大きさに鈎の脚を作り、脚の先端の断面を、穴の深さと同寸法ほどに たがね で縦に割る。
別に、くさび形の三角片を作り、脚の切り割った中に挟む。
くさびの頭は少々はみ出るようにする。
脚を穴に静かに差し入れ(この際、加熱して行うがよい)、鈎の外側を槌で打ち、脚を穴の底まで打ち込む。
くさびは底に押されて脚を開げ、脚の体積は、穴いっぱいにふくれ、鈎はがっちりと穴に食い込まれて動かない。
勘と経験による技術である。






引用:名和弓雄 著書 『 絵でみる時代考証百科 捕者道具編 』 第110頁

という方法です。
この方法なら、鈎穴が貫通穴にならないため鈎の反対側に矩形の穴やかしめた跡も出来ませんし、 焼きばめするため付け根はかしめ付けした十手鈎のようになります。


鍛鉄製の十手には稀に見られる方法の様なので可能性は十分にあります
でも、私程度の半端者が、そんな貴重な物を買えるとは思わないですし...。
しかし、事実かしめや矩形の穴が確認できないので、本当に『 割りかしめ 』の可能性はあります。






色々とよく分からないところがあるため、この十手は真贋が難しいところです。
しかし、 棒身の黒錆 全体的な造りから、贋作とも思えません

特に紐付環は不明瞭なところが多いですので、十手については、勉強しないとですね。