近江屋の御隠居の日録

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十手について 〜自分なりの見分け方〜

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贋作十手の良い見本 - 近江屋の御隠居の日録

上記事で、『 贋作十手に多い特徴 』をご紹介いたしました。

今回は、私の主観にはなるものの、十手の見分け方について記事にいたします。

 

 

 

 

※ 注意 ※

前述の通り、これはあくまでも私の『 主観 』で記事を書きます。

そのため、ここで挙げた傾向、特徴があれば必ず本物必ず贋物ではありません。

 

 

 

 

項目

  1. 全体的な雰囲気

  2. 先端面

  3. 太刀もぎの鈎

  4. 鮫皮の握柄

  5. 紐付環

 

 

 

 

1.全体的な雰囲気

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先ず、日本古来の鉄には『黒錆』が発生するようなので、赤錆だらけで錆の具合が新しいものは怪しいと思います。

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当時、目明かし十手は『銀棒』と呼ばれるように、木賊の皮を使い十手を磨いていたようです。

※『木賊』は、現代の100番台の紙やすりのようなもの。

したがって、棒身は握柄より錆の具合が薄いと思います。

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また、棒身に『錆』ではなく『黒皮』がついている十手は、贋物だと思います。

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黒皮は、熱間圧延加工された鋼材に発生する酸化皮膜なので、古来の鉄であれば黒皮は発生しないと思います。

私は骨董市で、この黒皮がついていた十手を買ったことがありますが、その十手は贋物でした。

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十手は手作業で鍛造して作るため、先細りや先太り手作業ならではの造形美がございます。

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そのため、綺麗に真っ直ぐ作られている十手は、工作機械を使ったものと考えられるため、近年製作された贋物の可能性があります。

 

 

2.先端面

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(左:贋物の十手、右:本物らしき十手)

十手の先端面は、金星になぞらえて『宵の明星』と言うようです。

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また、十手の先端面は『十手の顔』なので、ここが適当に作ってある十手は、怪しいと思います。

 

 

3.太刀もぎの鈎

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太刀もぎの鈎は、敵刃を押さえたり敵刃を捻って動けなくしたり敵刃を奪ったりなど、十手の中で重要な部分であり、最も力がかかる部分です。

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そのため、本物であればこの部分を適当に作ることは、まずあり得ません

したがって、鈎の付け根が溶接されている十手は、贋物や模造品と見て間違いないと思います。

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太刀もぎの鈎は、十手の棒身に矩形や正四角形の穴を開けて、そこにかしめ付けます。

かしめ穴が『矩形』なのは、鈎を捻って使う時に、鈎が回転しないようにするためです。

鈎のかしめ部の穴を確認するには、鈎の反対側を見れば分かります

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この鈎のかしめ部分が『円形』の十手は、贋物や模造品に多い傾向です。

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※菊座を付けてかしめられている十手は、本物の可能性がある。

滅多にはありませんが、稀に『内かしめ』という棒身内で鈎をかしめる方法があります。

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この場合、鈎の反対側を見ても矩形の穴はありません

鉄環に鈎を鍛接し十手に焼きばめされている場合や太鼓胴鈎鍔鈎も同様です

十手は武器なので、鈎の太さや大きさも大切です。

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(左:贋物十手の鈎、右:本物とおもしき十手の鈎)

そのため、鈎の大きさ厚さを見るのもポイントだと思います。

 

 

4.鮫皮の握柄

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私は、鮫皮の握柄の贋作十手を持っています

しかし、『鮫皮の握柄の十手』を、全否定は致しません

鮫皮の握柄の場合は、傾向があるからです。

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鮫皮の握柄の場合は...

  • 十手握柄上下の縁金、柄頭と高さが等しく、ピッタリと鮫皮が張られている。

  • 十手握柄上下の縁金、柄頭が同じ材料で作られており、紋様や彫刻も揃っている。

  • 鮫皮の合わせ目は、鈎を付けた面で合わせている。

という傾向です。

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これに該当しないものは、後世に作られたものだろうと、名和弓雄先生は著書で書かれておりました。

実際、私の鮫皮握柄の十手は、見事にこの傾向に当てはまらないです。

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贋物に3万円は痛い出費でしたが、テンプレートのような『THE・贋作十手』なので、これはとても良い贋物の資料になります。

 

 

5.紐付環

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紐付環も、前述の『太刀もぎの鈎』同様に、十手では重要な部分です。

紐付環は、名の通り房紐や捕縄を付けるための環で、十手は、必要に応じて房紐や捕縄を持ち振り回して使う事があるため、この紐付環も強度が必要です。

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紐付環は『水平回転環』である場合がほとんどで、これは十手に付けられた捕縄や房紐を解く時紐が絡まらずにスムーズに解ける様にするため水平回転する仕様になっています。

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紐付環は、このように作るようです。

※名和弓雄先生の著書『十手・捕縄事典』を参考。

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十手握柄末端を打ち伸ばし軸を作り台座から環になる細棒を打ち伸ばします

台座を十手握柄末端の軸に付けて軸先端を打ってかしめます

そして台座から打ち伸ばした細棒を曲げ先端を鍛接して紐付環になります

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もちろん、全部が全部この作り方をするわけではありません

 

町方与力同心の『真鍮製銀流し十手』関東取締出役の『鍛鉄製銀流し十手』、そして私がこの前入手した十手の紐付環は、上画像の作り方ではありません

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これは、どの様に作られているか不明です。

私は、この様に作ったのではないかと推測しました。

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これは十手握柄末端を打ち伸ばし軸を作り紐付環台座になる環軸にかしめ付けます

次に環になるC型の部品台座に鍛接します

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この様に考えると、自分の中で納得できました。

 

紐付環打ち伸ばして鍛接したり、付け根を鍛接して作りますので、紐付環が溶接されているものボルト止めされているものは、贋物か模造品と思われます。

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台座に溶接されている紐付環

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ボルト止めされている紐付環

また、台座が水平回転し環がパタパタと倒れる紐付環や、環がパタパタと倒れるだけの紐付環は、贋物や模造品に多いです。

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台座が水平回転し環がパタパタと倒れる紐付環

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環がパタパタと倒れるだけの紐付環

台座が水平回転し環がパタパタと倒れる紐付環は、環に強度がありません

この様に、環の部分が簡単に台座から外れてしまいます

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上画像のように、台座と環で材料が異なる紐付環は、基本的に贋物です。

環がパタパタと倒れるだけの紐付環についてですが、元々紐付環がない奈良京都の関西与力同心役人の十手が存在しこれに後世の人が後付けで、環を付ける場合がございます

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関西与力同心役人の十手

その場合、『十手は本物』という事になります。

 

 

 

 

 

 

時代劇でお馴染みの十手ですが、どうやら昭和30年代くらいまでは、警察で使われていたそうです。

新しめの十手でも、本物である場合があるのと同様に、古めで良い鉄味でも贋物の十手という事もございます。

 

参考資料

以下、敬称略。

  • 谷口柳造 著書「 十手・破邪顕正の捕物道具 」

  • 名和弓雄 著書「 十手・捕縄事典 ~江戸町奉行所の装備と逮捕術~ 」

  • 名和弓雄 著書「 絵でみる時代考証百科 捕物道具編 」