仕込み十手
『御用牙』の存在は知っていて、そこで『南蛮一品流鼻捻』が登場することも、十手好きとして当然確認しております。
ただし、劇画と時代劇では結構異なります。
◉南蛮一品流鼻捻
『南蛮一品流鼻捻』とは、『なんばんいっぽんりゅう はなねじ』と読みます。
「ナワ・ユミオ捕具コレクション」に実物と思われるものの写真があり、また説明も載っています。
南蛮一品流鼻捻
先端空洞部と棒身全体を、三枚の鍛鉄鉄筋で囲い、四方にはみ出した十手鉤をつけている。
長さは一尺八寸(58糎半)、直径一寸(約3糎)の丸棒一尺八寸のうち、手元四寸(14糎半)で六角形になり、握柄になっている。
先端の鉄蓋を捻ると蓋が外れ、十手を打ち振るうと分銅付きの鎖が降り出される。
というものです。
『南蛮一品流鼻捻』の通り、これは南蛮一品流の鼻捻です。
南蛮一品流の十手
南蛮一品流で『十手』と称するものは、棒身に鉤一個を貫き、反対方向に一文字状の横手を出し、横手と同方向の棒身打ち込みに小型の鉤を一個つけたもの。
このように、先生の事典にありました。
したがって、『南蛮一品流鼻捻』が正しい表記です。
まあこんな書きましたが、劇画版『御用牙』の十手は、『南蛮一品流鼻捻り』というよりも『制剛流無空十手』に近い気がします。
制剛流無空十手
(せいごうりゅう むくうじって)
木製棒身に鉄鍔を付け、鍔に接して四方に張り出した鉄製四つ鉤を付け、棒身の先端四寸程を中空にして、分銅付きの鉄鎖を振り出すという、特殊な十手。
です。
かみそり半蔵こと板見半蔵、彼の十手は、棒身に鉤が付いているというより、棒身に鍔鉤がついているように見えます。
また、分銅が蓋になっているのでは無く、棒身内側に収納されているように見えます。
そのためこれは『制剛流無空十手』に近いのではないかと思いました。
時代劇の御用牙の十手は、こちらです。
琉球古武術に使われる、『釵(サイ)』の手の内に鎖を仕込んだものになります。
これでは南蛮一品流鼻捻でも、制剛流無空十手でもないですね。
◉製作物
上にあるように、刀奪いの鈎が4つ付けられた十手を作りたかったのですが、ありあわせの材料ではイマイチなフックしか無かったので、今回は「十手 ~破邪顕正の捕物道具~」に載っている、ただの仕込み十手を作りました。
※当方趣味でこのような十手を作っただけですので、決して何かに使用するなどは致しません。
ではでは、その仕込み十手がこちらです。
一見、ただの鍔十手のように見えます。
しかし、先端が妙な形です。
そうです。
ここを抜くと、中から鎖が現れます。
分銅鎖を仕込んだ鍔十手というものです。
このタイプの鍔十手は1つも持っていないので、ただの鍔十手にする事も考えました。
しかし、どうせなら御用牙:隠密廻り同心・板見半蔵の『南蛮一品流鼻捻り十手』っぽくしたかったので、鍔十手に分銅鎖を仕込んだ物を作りました。
少し拘ったところもあり、握柄(にぎりえ)こと手の内、持ち手の部分は、細い糸を3重に巻いて握り心地を良くしています。
太い糸を1重で巻いた時より、握った時の感触が、良い気がします。
また、鍔と棒身の間には、防虫用銅テープで、ハバキを模しています。
さらに、分銅がすっぽ抜けないように、棒身内側をレジンで狭めて、日本刀で言う『鯉口』のようにしています。
今のところは問題ありません。
ただ、鯉口は経年劣化で緩くなるので、いずれはレジンを追加する事になると思います。
かみそり半蔵は、他にも六角形の十手も持っていますので、それも。
六角形の十手は黒い房紐なのですが、それは今他の十手に使っているので、赤い房紐をつけています。
前述しましたが、私は趣味で十手を作っているので、それで何かをする事は絶対にありません。
仕込み十手、時代劇的に有名なのは、『岡っ引き どぶ』の仕込み十手ですかね。
私は田中邦衛さんのどぶを見た事があります。
邦衛さんのどぶは、連続ドラマ版と時代劇スペシャル版で、仕込み十手の十手自体の形状が、少し異なりましたね。