右門捕物帖第42話「果てしなき野望」の鍔鈎十手
十手としては、ありえない部分がありますね。
これは、明らかに殺傷を目的とした十手です。
まず、こちらです。
これは、
第42話「果てしなき野望」
に登場した『 鍔付き鈎付き十手 』です。
一尺七寸(約51糎)程あり、鍔も鈎も大振りな、いかにも火付盗賊改らしい『 鍔付き鈎付き十手 』です。
鍔には、3ヶ所穴が空いています(鍔の模様ですね)。
鍔の一部から鈎が立ち上がっているため、『 鈎鍔 』ですね。
そのため、『 鈎鍔十手 』の方が表現としては適切かもしれません。
握柄には布が巻かれているように見え、紐付環は劇中プロップに多いタイプで、黒色房紐です。
「火付盗賊改らしい」と記述したように、この話「果てしなき野望」は火付盗賊改を悪人に描いた話です。
この話の火付盗賊改長官・信濃守は、部下の与力たちを使い無宿人を捕縛し(手形を持っていても偽物と判断し、無宿人に仕立てる)、脅して火付をさせて、その現場で火付犯を始末して手柄を立てる悪人です。
この十手は御先手組・筧信兵衛(演:睦五朗さん)が持っている十手で、火付犯を現場で始末する時に使います。
筧は、これを十手として使うのではなく、手裏剣のように投擲し、相手を刺殺するために使っていました。
小道具としては良いですが、十手的にはあり得ない使い方です。
この十手、小道具としては問題無いのですが、『 捕具としての十手 』としては有り得ない形です。
十手は、犯罪者を『 生捕り 』に、傷を出来るだけ与えずに捕えるために使います。
したがって、十手棒身先端は丸く作るのが当然であり、先端が尖っていれば、自分自身も傷を負う可能性があります。
一角流マロホシや鉄人十手流十手のような例外を除いて、十手棒身先端を錐のように鋭くする事は有り得ません。
これは、見ていて気になったところです。
右門捕物帖第42話「果てしなき野望」では、火付盗賊改長官・信濃守は、なぜか三十俵二人扶持を激しく嫌い、不浄役人と激しく見下します。
私的には、当時は火付盗賊改の方が嫌われているため、なんとも言えない気分です。
町方を『 檜舞台 』と呼び、火付盗賊改は『 乞食舞台 』と呼び、町民は火盗改を嫌っていたそうです。
※『 乞食舞台 』の呼び名は、時代劇では『 鬼平犯科帳'75 第10話「人情同心」』で確認できます。