必殺仕置屋稼業を見たことがある方でしたら、一度はこの作品で南町奉行所定町廻り同心・中村主水が持っている「十手」を目にしていると思います。今回は、その仕置屋稼業で中村主水が使用する「仕置屋主水十手」についてです。
※「仕置屋主水十手」は私が勝手に呼んでいるだけで、公式でそのように呼ばれているわけではありません。
仕置屋主水十手自体は、このような形状をしています。
またこの十手を模したものを以前製作致しました。
shumi-sonota-you.hatenablog.com
突然ですが、この仕置屋主水十手、やはり八州番太十手こと「楠流十手」だと思われます。
そのソースはこちらの十手の本です。
この本のp98「番太と捕具」のところに、
「楠流の十手は長さ一尺八寸で、手の内は長さ四寸で八角形の作り、手の内には必ず藤が巻かれている。「清目」の部分も八角形で、先端にいくほど細くなっている。刀うばいは縦形で大きく、目め副(緒付環)には緋色(朱色)の切り房が付いている。」
と記載してあります。
※目め副は「めめぐり」と読み、緒付環のことです。
※切り房は、手芸店で売っている普通の房(タッセル)のことです。
上画像の十手をよく見ますと、下記の特徴がありまることが分かります。
- 手の内に藤が巻かれている
- 清目の部分が八角形
- 先端にいくほど細くなっている
- 刀うばいは縦形で大きい
- 目め副には緋色(朱色)の切り房が付いている
仕置屋主水十手の手の内の長さや全長までは画像では分かりません。ですが、かなり長さのある十手だと分かります。全長一尺八寸(約680mm)あるかは分かりませんが、600mmはあると思われます。また手の内は四寸(約120mm)くらいはあるように見えます。しかし、手の内は八角形ではなく四角形ですのでこの部分は大きく異なります。
手の内の形状は異なりますが、仕置屋主水十手は八州番太十手であり楠流十手だと思われます。しかしなぜ定町廻り同心である中村主水が八州番太十手を持っているのか不思議です。
鬼岩の親分や音羽の萬蔵なら岡っ引きですので何となくわかるんですけどね。
この十手、まだ確定ではないのですが「八丁堀の七人」にて北町奉行所定町廻り同心・仏田八兵衛も捕物時の打ち払い十手として使用しています。
余談ですが、座頭市と用心棒(1970年)という勝新太郎さんと三船敏郎さんが共演した作品があるのですが、この作品に登場する草野大悟さん演じる番太が持っている十手は、この仕置屋主水十手のような十手でした(八州番太十手?楠流十手?)。
↑草野大悟さん
座頭市と用心棒には神山繁さん演じる関東取締出役が出演していましたので、関東八州のどこかの村が舞台ですね。
最後に、本題とは少しズレますが、神山繁さん演じる関東取締出役は、紫房の真鍮銀流し十手のようなものを差していました。
↑神山繁さん
袴から金色の手の内らしき部分が見えていますので、おそらく真鍮銀流し十手だと思います。