これは『 稽古用木製十手 』か?
ヤフオクで、気になっていたものがあったので、今回それを購入しました。
おそらく、タイトル通りの十手だと思います。
先ず、こちらが今回購入したものです。
全長:約40糎、定寸十手です。
十手棒身は楕円形、握柄は正円形のようです。
鈎付け根を境に先細りになっており、
- 握柄径:2.5糎
- 棒身径:2.0糎
でした。
棒身の表面はなんとも言えませんが、握柄は擦れているため、表面がなかなかに美しいです。
太刀もぎの鈎ですが、鈎が鍛接された鉄環を釘で固定していると思います。
付け根が若干細くなっていますが、錆をブラシで落としてみたら、鉄環に鈎を付けている事がわかりました。
鍛接かどうかは不明。
鈎反対側のかしめ部、この部分に矩形の跡が見えますね。
円形に見えますが、おそらくかしめ打った時に楕円形になったと思います。
『 木製鉄鈎十手 』は、現存数こそ少ないものの存在はしています。
『 鼻捻 』同様、木製ゆえに戦火で焼失、経年劣化で破損など、どうしても現存数は鉄製捕具より少ないです。
※これは明治大学博物館刑事部門にある、『 木製鉄鈎十手 』です。
この『 木製鉄鈎十手 』には、この様な特徴があります。
木製十手は、鼻捻から転化した節と、手木と称する1米(メートル)の樫丸棒から転化した説がある。
木製十手は、直径3糎から3糎半の樫の棒に、鍛鉄製の太刀もぎの鈎を付けた、長さ50糎から90糎ほどの大振りのものが多い。
棒身は、丸棒・六角棒・八角棒などがあり、握柄と棒身の断面を変えてあるものもある。
黒漆、朱漆掛けのもの、木地にふき漆のもの、黒漆や黄漆で握柄から棒身部分に蛭巻模様を施したもの、刀刃に斬らぬよう鉄の筋鉄を棒身に入れたもの、同じ目的のために鉄の帯板を棒身に巻いたものなどがある。
鈎の形状は、十字架形(左右横一文字鈎)、水牛形、釵形鈎、釵形鈎をL字形にしたもの、片鈎の一般的な十手形のもの、鈎を三方に付けたものなどがある。
木製十手の鈎の付け方は2通りある。
1つは、十手棒身にぴたりと合うように作られた鉄環(かまぼこ形鉄環)に、一文字、釵形鈎、角形鈎を鍛接して棒身にはめ込み、鉄環の上下片側もしくは上下両側に鏑巻きを施し、鈎を付けた鈎を固定する方法である。
もう1つは、棒身に角穴を開け、鈎の根本を埋め込み、根本の先端を少し出しておき、そこをかしめ打って先端を平たく潰して、鈎を棒身に固定する方法である。
木製十手にも、紐付環がついたもの、紐付穴が開けられたものもある。
と言う特徴です。
今回購入したものは、上記の特徴に当てはまりません。
そのため、この木製十手は捕具ではなく『 稽古用 』と推測しました。
『 稽古用木製十手 』には、この様な特徴があります。
白樫の木製丸棒、または六角棒、八角棒で直径2糎から3糎、長さは35糎から45糎程である。
形状は、流儀と術者の意のままである。
鉄製の鈎を打ち込み、かしめてある。
鈎だけは鉄製でないと折れやすいため、この部分のみ鉄製で作る。
手貫紐付けのみめぐり環のものや、手元握柄末端に紐付環を付けたもの、穴や環が無いものも見られる。
作りこみは、割合に粗末であるが、手擦れて時代色がある。
と言うものです。
この特徴が、今回私が購入した十手に当てはまるため、『 稽古用木製十手 』と断定しました。
『 稽古用木製十手 』は、下記リンクの正木会様の『 町方同心十手捕縄扱い様 』の御稽古で、使用されております。
※動画の稽古用十手は、現代物の稽古用木製十手です。
江戸町方十手捕縄扱い様 其之二 Jitte Jutsu 十手術 Bujutsu - YouTube
江戸町方十手捕縄扱い様 其之三 Jitte Jutsu 十手術 Bujutsu - YouTube
『 木製鉄鈎十手 』自体貴重な存在ですが、この『 稽古用木製十手 』も、そのくらい貴重な存在の十手です。
木製警棒の様な『 木製鉄鈎十手 』ではなく、竹刀や木刀の様な植物性稽古用具なので、むしろ珍しい貴重なものかも知れません。