確信はしていたのですが、名和弓雄先生著『十手・捕縄事典 -江戸町奉行所の装備と逮捕術』を読み、99.9%まで来たので、改めて記事にいたします。
自負するのはあれですが、この十手に関してはどの必殺ファンよりも知識を持っており、又研究をしていると思っています。
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前回記事では、仕置屋主水十手の使用例について触れました。
ここではそれに触れず、この十手の特徴と、実物十手ではどれに該当するのかを、再び記述いたします。
◉仕置屋主水十手の特徴
ここで挙げた3枚が、分かりやすい仕置屋主水十手画像です。
当ブログをご覧になられている方なら、もうご存知だと思います。
以下に、この十手の特徴を記します。
全長約60cm、棒身は八角形で先端に行くほど面取りが大きくなっていて、若干先細り。
刀奪いの鈎は矩形で直角縦型、太くて厚い作りになっている。
手の内(握柄・にぎりえ)は四角形で全体に藤巻が施されている。
緒付環は三角形で、猪目と思われる形状で、付け根は円筒状になっている。
房紐は朱色で房数は2つ、作品によっては十手棒身に紐のが巻かれている。
と、このような感じです。
中村主水の歴代十手の中でも、1番大ぶりに造られている十手です。
暗闇仕留人第10話「地獄にて候」で、悪人の手先の駕籠担ぎ2人を仕置する時に使ったりと、裏稼業でもちょくちょく使われています。
◉予想される十手
この仕置屋主水十手、実物の十手では「八州番太十手」こと「楠流十手」になると思います。
ここで、その「八州番太十手」、「楠流十手」の特徴について記します。
まず、谷口柳造先生著『十手 -破邪顕正の捕物道具-』から。
P.98「番太と捕具」の項に、こうあります。
楠流の十手は一尺八寸(約54~55糎)で、手の内は長さ四寸(約12糎)で八角作り、手の内には必ず藤が巻かれている。
「清目(棒身)」の部分も八角形で、先端にいくほど細くなっている。
刀うばいは縦型で大きく、目め副(緒付環)には緋色の切り房がついている。
次に、名和弓雄先生著『十手・捕縄事典 -江戸町奉行所の装備と逮捕術-』です。
P73「八州番太の十手」の項に、こうあります。
総丈が長く、棒身直径が太く、丈夫な大振りの太刀もぎ鈎のついた十手を、一般には「番太十手」と俗称しているが、八州番太の十手は「楠流十手(くすのきりゅう じって)」とも呼ばれている特殊なもの(略)。
総長一尺八寸(約54~55糎)、八角棒身、握柄正四角で藤巻き、鈎平形大振りで、鈎巾一寸(3糎)、横手内のり一寸一分(3糎3粍)。
銀磨きで赤絹紐二尺(60糎)を紐付環につける。
(途中略)
大振りな鍛鉄十手で、長さが一尺八寸あり、鈎幅が広く、握柄が正四角で、棒身が八角であれば「楠流十手」と鑑定して良いと思う。
途中略のところは、鈎幅が広い理由が記載されていました。
鈎幅が広いのは、竹槍や農具と言った刀以外の武器を絡め取るためだと、名和弓雄先生の書籍にありました。
また、「鈎巾」と「横手内のり」は、こういうことだと思います。
緑色が「鈎巾」、赤色が「横手内のり」です。
十手は蒐集物から研究されていますので、若干の違いがございます。
違いは、手の内が四角か八角というところで、大きさや刀奪いの鈎などは、共通していますね。
◉実物との共通点
まあ、共通点というか、私はここに注目しました。
大振りな鍛鉄十手で、長さが一尺八寸あり、鈎幅が広く、握柄が正四角で、棒身が八角であれば「楠流十手」と鑑定して良いと思う。
というところです。
仕置屋主水十手はそれ自体を画面でしか見たことがないため、全長については正直不明です。
自分が見た感じでは、60cmほどあるように思います。
しかし、大まかな特徴は押さえています!!
ここで、一度「仕置屋主水十手」をどうぞ。
名和弓雄先生の書籍と、ほとんど同じに見えます。
紐の長さも、当方が製作した仕置屋主水十手も60cmほどで、これは画像を見ながらなんとなく作ってその長さになったので、仕置屋主水十手も60cmほどの紐だと思います。
大きく異なるのは刀奪いの鈎で、仕置屋主水十手は棒身との幅が狭いため、ここは異なるところです。
また、八州番太十手は先端にいくほど細くなっているのですが、仕置屋主水十手は細くなっているにしても、そんなに細くなっていないので、そこは同じ細くなっているにしても、少し異なる気がします。
緒付環は、仕置屋主水十手は猪目(逆ハート型)、八州番太十手は楕円なのですが、ここについての記述はなかったので、特に形に決まり事はないと思います。
房紐は、谷口柳造先生の書籍の特徴と同じに見えます。
◉結論
もう何を述べるか、お分かりだと思います。
少し異なるところはあっても、特徴は捉えていますので...。
私は、仕置屋主水十手を八州番太十手、楠流十手だと鑑定いたします。
7年前くらいに、ヤフオクで仕置屋主水十手が出品されていました。
ぱっと見はそれっぽいですが、個人的には藤はただ巻かれただけですし、先端にいくほど細くなっていますので、仕置屋主水十手というよりも、八州番太十手を基に製作しているように見えます。
以上です。
これだけ資料や材料を集め、纏め、根拠も示しましたので、これは楠流十手だと判断しました。
全く関係ないのですが、先程「斬り捨て御免!第2シリーズ 第3話」のラス立ちを視聴しました。
そのため、近々うちの子も花房出雲っぽくなると思います。