伝七捕物帳の捕物道具
今回は、中村梅之助版伝七捕物帳で、黒門町の伝七親分が使う捕物道具についてです。
先ず、伝七親分は岡っ引きです。
この「岡っ引き」というのは、十手を持っていますが奉行所非公認の存在で、町方同心などから私的に雇われることで、給金を得る事ができます。
その時は、岡っ引きや目明かしとしてでは無く、名目上は「小者」として、同心が雇い入れた使用人という位置付けにされていました。
さらに、十手も必要に応じて奉行所に借りに行く、実費で製作する、雇い主から拝領するなど様々です。
また、十手はよく「銭形平次の十手」などとして、黒い房紐がついているものや、「岡っ引きの十手」として、赤や青の房紐がついている十手が売られていますが、江戸の岡っ引きは、房付きの十手は持ちませんし、赤い房付きの十手は町奉行配下の者や火付盗賊改が持つ十手につきますので、町人で非公認である岡っ引きでは所持できません。
多分、赤い紐のみで先端に分銅のついているものなら、江戸の岡っ引きも所持できたと思います。
「新五捕物帳」の駒形の新五の十手が、それですので。
「江戸の岡っ引き」は、房付き十手は持ちませんので、よく手の内(持ち手)に藤を巻いたもの、羅紗布を巻いたもの、麻糸を巻いたものを所持したそうです。
「大坂の岡っ引き」は、それではありません。
大坂は四人の目明かし親分衆がおり、彼らは赤い房紐付きの十手を持ち、その親分のところの若衆は、銭形平次のように黒い房紐付きの十手を持ったようです。
目明かし、岡っ引き、呼び方も様々ですし、地方によっても異なります。
本題の「黒門町の伝七」に、戻ります。
伝七親分は、江戸の岡っ引きです。
しかし、彼はなぜか紫房の十手を持っています。
これは...
伝七は元々罪人であったが、北町奉行・遠山左衛門尉が伝七の気風と器量に惚れ込み、伝七を赦免する代わりに小者に任命したため、岡っ引だが紫房の十手やなえしを所持している。
という理由があるからのようです。
伝七親分は十手の他に、「なえし」と呼ばれる鈎無十手と万力鎖も使います。
↓なえし(鈎無し十手)
↓万力鎖
伝七親分は、時には十手と万力鎖で、時には十手となえしの組み合わせで、悪党と闘います。
この十手となえしの組み合わせ、右手になえし左手に十手なら「双角(そうかく)」という、正木流の町方同心十手捕縄扱い様にある型になるのですが、伝七親分はその逆ですので、これも双角というのかは不明です。
ここで正木流と言いました。
伝七親分は正木流十手術の使い手という設定もあり、捕物の前には「破邪顕正の構え」を披露したり、万力鎖を使う時には「霞の構え」も披露します。
↓破邪顕正の構え
中村梅之助さんは、伝七を演じる際に、実際に正木流万力鎖術を習ったようなので、梅之助さんの万力鎖術は本物ですね。
分銅鎖は同心暁蘭之介で、蘭之介がたまに使いますが、なえしが登場するのは珍しいと思います。
杉良太郎さんの時代劇は、十手面で見ても面白ですよ。
毎度ながら、伝七親分が使用する十手やなえしを再現しました。
なえしは木製で、アルミテープで仕上げています。
十手と万力鎖は既製品です(十手の房紐は後付けです)。
↓十手
↓万力鎖
これでちょっとした伝七親分気分が味わえます。
長文失礼いたしました。
どうしても十手関連になりますと、力が入ってしまうため、いつもより多めになってしまう気がします。
皆様の時代劇鑑賞の参考になれば、幸いです。