鍔鉤十手や鍔十手
久しぶりの十手ネタです。
時代劇にも登場する「鍔十手」または「鍔鉤十手」、今回はそれについてです。
名前の通り、十手に刀の鍔がついて十手を「鍔十手」や「鍔鉤十手」と言い、刀奪いの鉤があるものを「鍔鉤十手」、鉤がない、なえし(鉤無し十手)に鍔をつけた十手を「鍔十手」と言います。
この十手には共通点があります。
それは...
火付盗賊改の十手
(ひつけ とうぞく あらため)
という事です。
火付盗賊改、通称:火盗改(かとう あらため)と言い、江戸時代初期に設立された臨時警察で、博徒やならず者、火付け、盗賊の取り締まりを行なう組織です。
当時も町奉行所はありましたが、生捕りを行う町方では、非武装ゆえ凶賊相手では手に負えないため、これらを武力制圧するために、火付盗賊改が設立されたとか。
火盗改は、怪しい者であれば武士、町人、僧侶など身分に関わらず捕縛できるため、また苛烈を極めた捜査ゆえに誤認逮捕も多かったらしく、長谷川平蔵などごく一部以外は嫌われていたようです。
時代劇で、悪役が多いのも頷けます。
もちろん、その苛烈を極めた捜査ゆえの功績もあり、「鬼勘解由」、「鬼勘」と呼ばれた江戸初期の火盗改長官「中山勘解由」は、当時江戸で問題となっていた旗本奴:大小神祇組(だいしょう じんぎ ぐみ)を取り締まり、弾圧し、壊滅に追い込んだようです。
※画像は「鳳城の花嫁」から
前述にもあるように、火盗改は凶暴な博徒や賊徒を相手に取り締まりを行うため、十手も実践向きのものを採用しています。
町奉行所の同心とは異なり、火盗改の十手には官給品に制度は無く、ごつくて強固な十手を採用していたようです。
そのため、よく見る十手とは異なり、握り心地をよくするため、手の内(柄の部分)に握柄をつけた十手が多く存在します。
私は、それらを基に3年くらい前に鍔鉤十手を製作いたしました。
φ12㎜の木材丸棒を清目に使い、鉤も角材で作っています。
鍔はワッシャー(座金)を2枚重ねてつけているため、ずっしりとしています。
手の内には、内径φ13㎜の塩ビ管を使用し、握柄を表しています。
私が製作した十手の中でも、気に入っている十手ゆえ、また製作したいと思います。
次製作するならば、この鍔鉤十手も良いですが、なえしに鍔をつけたような鍔十手も、作ってみたいです。
↓この十手が、ここで紹介した鍔鉤十手になりました。
鍔十手、鍔鉤十手は時代劇でも確認できます。
火付盗賊改作品である「鬼平犯科帳」の火盗改与力同心が持っているものが鍔鉤十手です。
下画像で、鬼平こと長谷川平蔵が持っている十手は、鍔十手のように見えます。
鍔十手より、鍔鉤十手の方が登場率が高く、鍔十手と思われるものは、1974年NET版「右門捕物帖」第27話以降のOPや、同心暁蘭之介のOPで、確認することができます。
右門捕物帖OPと同心暁蘭之介OPに共通する鍔十手は、鬼平の十手として知られているものに似ています。
※時代考証家:名和弓雄氏の私物だと思われます。
追記(2022年3月12日)
破れ奉行第22話や、松方弘樹さん以降の大江戸捜査網第3シリーズで、握り柄のみで鍔のない火盗改の十手を見ることができます。
鍔はなくても、棒は六角形で大ぶりの刀奪いの鉤と、実践向きの作りとなっております。